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パソコンでご覧の方は、スマートフォンでQRコードを読み取ってLINEの友だち追加ができます。この記事は2021年に公開したものを、2026年9月の制度(インボイスの2割特例の終了・3割特例の創設など)にあわせて全面的に書き直しました。
こんにちは。高槻市城南町で税理士事務所をしている、税理士の石黒 賢です。
脱サラして独立した、資格を取って開業した、副業が本業になった――そんなふうにフリーランス(個人事業主)として働き始めると、まず「税務署に何を出せばいいの?」という壁にぶつかります。
この記事では、フリーランスを始めるときに必要な税務手続を、「全員が出すもの」「人を雇う人だけのもの」「消費税・インボイスに関するもの」の3つに分けて、期限と提出先をまとめました。最後に、開業のときに見落としやすい税金以外の手続と、よくある質問も載せています。
この記事でわかること
まず全体像です。太字の2つは、ほぼ全員が出す書類です。
| 書類 | 期限 | 提出先 | 対象 |
|---|---|---|---|
| 開業届(個人事業の開業・廃業等届出書) | 開業から1か月以内 | 税務署 | 全員 |
| 所得税の青色申告承認申請書 | 開業から2か月以内(1月1日〜15日に開業した場合は3月15日まで) | 税務署 | 青色申告をしたい人(ほぼ全員におすすめ) |
| 事業開始等申告書 | 開業から2か月以内(大阪府の場合) | 府税事務所 | 全員 |
| 青色事業専従者給与に関する届出書 | 開業から2か月以内 | 税務署 | 家族に給与を払う人 |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 雇った日から1か月以内 | 税務署 | 家族・従業員に給与を払う人 |
| 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 随時 | 税務署 | 給与を払う人のうち、常時10人未満のところ |
| 労働保険・社会保険の加入手続 | 雇った日から10日以内など | 労働基準監督署・ハローワーク・年金事務所 | 従業員を雇う人 |
| 適格請求書発行事業者の登録申請書(インボイス) | 開業年から登録するなら、その年の12月31日まで | 税務署 | インボイスを発行したい人 |
| 消費税簡易課税制度選択届出書 | 開業年から適用するなら、その年の12月31日まで | 税務署 | 簡易課税を選びたい課税事業者 |
税務署への書類は、e-Tax(国税電子申告・納税システム)からまとめて提出できます。開業届と青色申告承認申請書は同じ日に出すのが一番ラクです。
開業した日・場所・屋号・事業の内容などを書いて、税務署に「事業を始めました」と知らせる書類です。期限は開業から1か月以内。出さなくても罰則はありませんが、次のような場面で開業届の控えが必要になるので、早めに出しておきましょう。
控えは、e-Taxなら受信通知を、紙で出すなら控え用にもう1部用意して受付印をもらっておきます(2025年からは税務署で控えに収受印を押してもらえなくなったので、e-Taxで出すのがおすすめです)。
確定申告を「青色申告」でしたい人が出す書類です。期限は開業から2か月以内(1月1日〜15日に開業した場合は、その年の3月15日まで)。出し忘れた場合はその年は白色申告になり、翌年の3月15日までに出せば翌年分から青色になります。
青色申告にすると、次のような特典があります。帳簿をきちんとつける手間はかかりますが、この特典だけで年に数万円〜十数万円の税金が変わることも珍しくありません。
税務署とは別に、都道府県にも「事業を始めました」という申告書を出します。大阪府では「事業開始・変更・廃止申告書」を、開業から2か月以内に、事業所の所在地を担当する府税事務所へ提出します(高槻市・茨木市なら三島府税事務所)。これは個人事業税のための手続です。個人事業税は、事業の所得が年290万円を超える場合に課税されるので、開業したばかりの方はすぐには関係ないことも多いですが、申告書は出しておきましょう。
「人を雇う」と手続が一気に増えます。ひとりで始める方はこの章は読み飛ばして、次の「消費税・インボイス」へ進んでください。
原則として、生計を同じくする家族(配偶者・子など)に払った給与は経費になりません。「妻に手伝ってもらっているから給与を払った」という場合も同じです。
ところが、この届出書を出しておくと、届け出た金額の範囲内で家族への給与を経費にできます。期限は開業から2か月以内(家族が働き始めた日から2か月以内)。青色申告の承認申請と同時に出すことが多い書類です。
ただし、次のような場合は経費として認められないので注意してください。
また、専従者給与を払った家族については、配偶者控除・扶養控除は受けられなくなります。給与の額が小さい場合は、給与を払わずに配偶者控除を受けたほうが有利なこともあるので、金額の決め方はご相談ください。
家族や従業員に給与を払うと、雇い主には給与から所得税を天引きして税務署に納める義務が生じます。この天引きした税金を「源泉所得税」といいます。「給与を払い始めました(=源泉所得税を納めます)」と税務署に知らせるのがこの書類で、期限は最初に給与を払うことになった日から1か月以内です。
源泉所得税は、原則として給与を払った月の翌月10日までに毎月納めます。給与を払う人が常時10人未満であれば、この申請書を出すことで、年2回(1〜6月分を7月10日まで、7〜12月分を翌年1月20日まで)にまとめて納められるようになります。
提出期限はなく、いつでも出せます。申請した月の翌月に払う給与から特例が使えるので、給与支払事務所等の開設届出書と一緒に出しておくと、毎月の納付を忘れる心配が減ります。
従業員を雇うと、税金のほかに保険の手続もついてきます。
これらの手続は社会保険労務士の専門分野です。当事務所からも社労士さんをご紹介できますので、人を雇う予定の方は早めにお声がけください。
消費税は「2年前の売上が1,000万円を超えているか」で納税義務が決まります。開業したばかりの方には2年前の売上がないので、原則として開業年とその翌年は消費税を納めなくてよい「免税事業者」です(開業年の前半6か月の売上と給与がどちらも1,000万円を超えると、翌年から課税される例外があります)。
ここが、開業時にいちばん悩むところです。インボイスに登録すると、免税事業者でいられる期間であっても消費税を納める「課税事業者」になります。登録するかどうかは、売上先が誰かで考えるのが基本です。
開業した年からインボイスを発行したい場合は、登録申請書を開業年の12月31日までに出せば、開業日にさかのぼって登録できます。翌年以降に登録する場合は、登録を受けたい日の15日前までに申請します。
インボイス登録によって課税事業者になった小規模な事業者には、納める消費税を「売上にかかる消費税の2割」にできる「2割特例」がありました。この特例は令和8年(2026年)9月30日の属する課税期間まで、個人事業主なら2026年分の申告が最後です。
令和8年度の税制改正で、そのあとを引き継ぐ形で個人事業主だけに「3割特例」が設けられました。2027年分・2028年分の申告では、納める消費税を売上にかかる消費税の3割にできます(届出は不要。基準期間の課税売上高が1,000万円以下の方が対象)。2029年分からはこの特例もなくなり、原則どおりの計算か、次の簡易課税を選ぶことになります。
課税事業者になる人が、消費税の計算を「売上にかかる消費税×業種ごとの一定割合」で簡単に済ませるための届出です。仕入や経費が少ない業種(サービス業・ライターやデザイナーなど)では有利になることが多いです。開業年から適用するなら、その年の12月31日までに出します。2割特例・3割特例の期間中は、確定申告のときにどちらか有利なほうを選べるので、あわてて出す必要はありません。
税金の手続ではありませんが、会社員から独立した方がよく見落とすものをまとめておきます。
届出を出し終えると、あとは日々の帳簿づけと、翌年3月15日までの確定申告が待っています。開業のときに次の3つを整えておくと、確定申告の負担がまったく違います。
当事務所の税務顧問は、ご自身で会計ソフトに入力していただき、税理士が定期的にチェック・説明する形を基本にしています。「帳簿のつけ方を最初からきちんと整えたい」という方は、税務顧問のページもご覧ください。
開業準備では、事務所やお店のホームページを用意する方も多いと思います。自分で作る場合の手順と費用は「ホームページを自分で作る方法と費用」にまとめています。
罰則はありません。ただし、青色申告の承認申請は開業届とセットで出すのが通常で、屋号つき口座の開設や小規模企業共済の加入などでも開業届の控えを求められます。開業から1か月を過ぎていても受け付けてもらえるので、まだの方は今からでも出しておきましょう。
副業の収入が「事業所得」にあたる規模(継続的に、相応の収入があり、帳簿をつけている)であれば開業届と青色申告承認申請を出せます。ただし、副業の規模が小さい場合は「雑所得」として扱われ、青色申告の特典は使えません。判断に迷う場合はご相談ください。
なります。開業準備のために使った費用(名刺・ホームページ・セミナー代・打合せの交通費など)は「開業費」として、開業後に好きなタイミングで経費にできます。領収書は開業前の分から取っておいてください。ただし、10万円以上のパソコンや機械などは開業費ではなく、固定資産として減価償却します。
その年は白色申告になりますが、翌年の3月15日までに申請すれば翌年分から青色申告になります。青色事業専従者給与の届出も同じ扱いです。忘れないうちに、今すぐ出しておくことをおすすめします。
売上や利益の見込み、取引先の希望、社会保険の負担などによって答えが変わります。一般には、利益が安定して出るようになってから法人にする方が多いですが、開業時から法人でなければ取引できない業種もあります。会社設立・新規開業のページに、法人にするときの考え方をまとめています。
ひとりで開業する方の税務手続は、「開業届」「青色申告承認申請書」「事業開始等申告書」の3つを出せばひと段落です。あとは、インボイスに登録するかどうかを、取引先の顔ぶれを見ながら決めてください。人を雇う場合は、給与と保険の手続が加わります。
私自身も2023年に独立して事務所を開業しましたので、開業のときの不安や、手続の面倒さはよく分かります。手続そのものはむずかしくありませんが、「いつまでに」「何を選ぶか」で、その後の税金が変わってくるところがあります。分かりにくいところがあれば、気軽にお問い合わせください。