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相続の手続きも相続税の申告も、最初にやることは「相続人は誰か」を確定させることです。相続税の基礎控除や生命保険金の非課税枠は相続人の数で決まり、遺産の分け方の話し合い(遺産分割協議)も、相続人全員がそろわなければ成立しません。この記事では、相続人の決まり方と、確定に必要な戸籍の集め方を整理します。
結論
配偶者がいれば、配偶者は必ず相続人になります(法律上の婚姻をしている配偶者に限ります。内縁の配偶者は相続人になりません)。配偶者と一緒に相続人になる人は、次の順位で決まります。先の順位の人が1人でもいれば、後の順位の人は相続人になりません。
| 順位 | 配偶者と一緒に相続人になる人 | 相続人になるのはどんなとき? | 法定相続分 |
|---|---|---|---|
| 第1順位 | 子 (子がすでに亡くなっていれば、その子の子=孫) | 子(または孫)がいれば必ず | 配偶者 1/2 子 1/2 |
| 第2順位 | 父母 (父母がどちらもいなければ祖父母) | 第1順位の人が誰もいないとき | 配偶者 2/3 父母 1/3 |
| 第3順位 | 兄弟姉妹 (兄弟姉妹がすでに亡くなっていれば、その子=甥・姪) | 第1順位・第2順位の人が誰もいないとき | 配偶者 3/4 兄弟姉妹 1/4 |
根拠:国税庁タックスアンサー No.4132 相続人の範囲と法定相続分/民法(e-Gov法令検索) 第887条・第889条・第890条・第900条
たとえば
父が亡くなったとき、長男がすでに亡くなっていたとします。この場合は、長男の子(父から見ると孫)が、長男の代わりに相続人になります。これを「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」といいます。
代襲相続は、兄弟姉妹が相続人になる場合にもあります。ただし、どこまで下の世代へ続くかが、子の場合と兄弟姉妹の場合で違います。
| 相続人になるはずの人が すでに亡くなっていた | 代わりに相続人になる人 | その人もすでに亡くなっていた |
|---|---|---|
| 子(第1順位) | 孫 | 孫の子(ひ孫)が相続人になる。さらに下の世代へも続く |
| 兄弟姉妹(第3順位) | 甥・姪 | 甥・姪の子は相続人にならない |
兄弟姉妹の代襲相続は、甥・姪の1代限り
たとえば、亡くなった方の兄がすでに亡くなっていれば、兄の子(甥・姪)が兄の代わりに相続人になります。ところが、その甥・姪もすでに亡くなっていた場合、甥・姪の子が代わりに相続人になることはありません。子の場合は孫・ひ孫と下へ続きますが、兄弟姉妹の場合は甥・姪で止まります。
なお、甥・姪や兄弟姉妹が財産を相続した場合、相続税は2割加算の対象になります(代わりに相続人になった孫は2割加算の対象外です)。
根拠:民法(e-Gov法令検索) 第887条第2項・第3項、第889条第2項/国税庁タックスアンサー No.4132 相続人の範囲と法定相続分/国税庁タックスアンサー No.4157 相続税額の2割加算
| ケース | 相続人になる? |
|---|---|
| 前の結婚で生まれた子 | なる(今の家族の子と同じ第1順位の相続人) |
| 認知した子 | なる |
| 養子 | なる(実子と同じ扱い)。ただし相続税の基礎控除で数える養子は、実子がいれば1人・いなければ2人まで |
| 亡くなった方より先に死亡していた子の子(孫) | なる(代襲相続) |
| 再婚相手の連れ子 | 養子縁組をしていなければならない |
| 相続放棄をした人 | 相続人ではなくなる(次の見出しで解説) |
戸籍を集めて初めてわかることも
ご家族も知らなかった前の結婚の子や認知した子が、戸籍から見つかることがあります。その方を含めて遺産分割協議をしないと、協議がやり直しになってしまいます。
相続放棄は、プラスの財産も借金も、一切引き継がないための手続きです。家庭裁判所に申し立てて認められると、その人は初めから相続人でなかったものとして扱われます。
| 手続き | 亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所に申し立てます |
|---|---|
| 期限 | 自分が相続人になったことを知った時から3か月以内(間に合わないときは、期間の延長を申し立てられます) |
| 相続人の順位 | 放棄した人は相続人でなくなるため、次の人に相続人が移ります。子が全員放棄すると第2順位の父母へ、父母もいなければ第3順位の兄弟姉妹へ移ります |
| 代襲相続 | 放棄した人の子が、代わりに相続人になることはありません |
| 遺産を使った場合 | 預金を引き出して使う、財産を売るなどをすると、相続を認めたものとみなされ、放棄できなくなることがあります |
「遺産を何ももらわない」と「相続放棄」は違います
遺産分割協議で「自分は何も受け取らない」と決めても、それは相続放棄ではありません。借金を返す義務は残ります。借金を引き継ぎたくない場合は、家庭裁判所での相続放棄が必要です。また、放棄によって新しく相続人になる親や兄弟姉妹には、早めに知らせておきましょう。
相続税では、放棄した人の扱いに注意
| 項目 | 放棄した人の扱い |
|---|---|
| 基礎控除の人数 (3,000万円+600万円×人数) | 含めます。放棄がなかったものとして人数を数えます。放棄によって次の順位に回った人(親・兄弟姉妹など)は数えません |
| 生命保険金の非課税枠 (500万円×人数) | 枠の計算の人数には含めます。ただし、放棄した人が受け取った保険金には非課税枠を使えません |
例:配偶者と子2人のうち、子2人が相続放棄をして、亡くなった方の母が相続人になった場合
基礎控除の人数は「配偶者+子2人=3人」(母は数えません)
基礎控除額=3,000万円+600万円×3人=4,800万円
根拠:裁判所「相続の放棄の申述」/国税庁タックスアンサー No.4152 相続税の計算/国税庁タックスアンサー No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金/相続税法(e-Gov法令検索) 第12条第1項第5号・第15条第2項/民法(e-Gov法令検索) 第915条・第921条・第939条
1人の一生分の戸籍は、何通にも分かれています
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| 必要な戸籍 | 理由 |
|---|---|
| 亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍(除籍謄本・改製原戸籍謄本を含む) | 子(前の結婚の子・認知した子・養子を含む)が何人いるかを確認するため |
| 相続人全員の現在の戸籍 | 相続人が今も生きていることと、続柄を確認するため |
| (亡くなった方より先に死亡した子がいる場合)その子の出生から死亡までの戸籍 | 代わりに相続人になる孫が何人いるかを確認するため |
| (兄弟姉妹が相続人の場合)父母の出生から死亡までの戸籍 | 兄弟姉妹(異母・異父の兄弟姉妹を含む)が何人いるかを確認するため |
戸籍は、結婚や転籍、法律の改正による作り替え(改製)のたびに新しく作られます。1人の方の一生分をそろえるのに、何通もの戸籍が必要になるのがふつうです。
戸籍の集め方はこう変わりました
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以前は、本籍地の市区町村ごとに請求する必要がありました。2024年3月1日からは、本籍地が遠方でも、最寄りの市区町村の窓口でまとめて請求できる「広域交付」が始まっています。
| 項目 | 広域交付のルール |
|---|---|
| 請求できる人 | 本人、配偶者、父母・祖父母など(直系尊属)、子・孫など(直系卑属)の戸籍を、その本人が請求できます |
| 請求できない戸籍 | 兄弟姉妹の戸籍、戸籍抄本(個人事項証明書)、コンピュータ化されていない一部の戸籍 |
| 請求の方法 | 請求する本人が市区町村の窓口で。郵送や代理人による請求はできません(税理士・司法書士などの専門家による請求もできません) |
| 持ち物 | 顔写真付きの本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど) |
| 時間 | 他の市区町村への照会が必要なため、交付まで時間がかかることがあります |
兄弟姉妹が相続人になる場合は
兄弟姉妹が相続人になる場合でも、父母の戸籍は広域交付で請求できます(兄弟姉妹から見て、父母は自分の直系尊属だからです)。ただし、亡くなった方が結婚などで親の戸籍から出た後の戸籍は、兄弟姉妹からは広域交付で請求できないため、本籍地の市区町村へ郵送で請求します(手数料は定額小為替で支払うのが一般的です)。古い戸籍は手書きで読みにくいこともあるので、つながりが途切れていないか、1通ずつ確認しましょう。
法定相続情報一覧図があると、手続きがぐっと楽に
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集めた戸籍をもとに相続関係を1枚の図にまとめ、法務局に提出すると、登記官の認証を受けた「法定相続情報一覧図の写し」を無料で交付してもらえます(法定相続情報証明制度)。
| 提出先 | 亡くなった方の本籍地・最後の住所地、申出人の住所地、亡くなった方名義の不動産の所在地のいずれかを管轄する法務局 |
|---|---|
| 費用 | 無料。必要な枚数の写しを交付してもらえます |
| 使える場面 | 銀行の預金の相続手続き、相続登記、相続税の申告(戸籍謄本の代わりに添付できます) |
| 保存期間 | 法務局で5年間保存され、その間は再交付を受けられます |
※ 相続税の申告に使う場合は、子が実子か養子かが分かるように記載された一覧図が必要です。養子がいる場合は、その養子の戸籍謄本(または抄本)もあわせて添付します。


亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍(除籍謄本・改製原戸籍謄本を含む)と、相続人全員の現在の戸籍が必要です。兄弟姉妹が相続人になる場合は、父母の出生から死亡までの戸籍も必要になります。
2024年3月1日からは広域交付により、本人・配偶者・父母や子などの戸籍であれば、最寄りの市区町村の窓口でまとめて請求できます。兄弟姉妹の戸籍は対象外で、郵送や代理人による請求もできません。
なりません。兄弟姉妹の代わりに相続人になれるのは甥・姪までの1代限りです。子の場合は孫・ひ孫と下の世代へ続きますが、兄弟姉妹の場合は甥・姪で止まります。
根拠:民法第889条第2項(第887条第2項を準用し、再代襲を定めた第887条第3項は準用していません)/国税庁タックスアンサー No.4132 相続人の範囲と法定相続分
入ります。相続放棄をした人は相続人ではなくなりますが、相続税の基礎控除や生命保険金の非課税枠を計算するときの「法定相続人の数」には、放棄がなかったものとして含めます(相続税法第15条第2項)。ただし、放棄した人が受け取った生命保険金には非課税枠を使えません。
根拠:相続税法第15条第2項・第12条第1項第5号/国税庁タックスアンサー No.4152 相続税の計算/国税庁タックスアンサー No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金
使えます。戸籍謄本の代わりに、法定相続情報一覧図の写しを相続税の申告書に添付できます。ただし、子が実子か養子かが分かるように記載された一覧図に限ります。また、養子がいる場合は、その養子の戸籍謄本(または抄本)もあわせて添付します。
根拠:相続税法施行規則第16条第3項第1号ロ/国税庁「平成30年度税制改正により相続税の申告書の添付書類の範囲が広がりました」
税理士からひとこと
相続人の確定は地味な作業ですが、ここを間違えると、基礎控除の金額も遺産分割協議もすべてやり直しになります。古い戸籍の読み取りが必要な場合や、相続人が多い場合は、戸籍の収集や相続人の確定を司法書士さんにお願いすることをおすすめします。その場合は、司法書士さんもご紹介できます(相続登記もあわせてお願いできます)。相続税の申告は、当事務所でお手伝いします。
相続税・贈与税のご案内
あわせて読みたい
※この記事は2026年10月時点の制度に基づいています。
参考(リンクは新しいタブで開きます):
・国税庁タックスアンサー No.4132 相続人の範囲と法定相続分
・国税庁タックスアンサー No.4152 相続税の計算
・国税庁タックスアンサー No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金
・国税庁タックスアンサー No.4157 相続税額の2割加算
・法務省「戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)」
・法務局「法定相続情報証明制度について」
・裁判所「相続の放棄の申述」
・民法(e-Gov法令検索)、相続税法(e-Gov法令検索)、相続税法施行規則(e-Gov法令検索)、戸籍法(e-Gov法令検索)